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どれもが同じ「手桶」に見えた頃に

ほんの6、7年前、桶や椅子、箪笥など中国古道具を一度にたくさんの品々を見ることができた時期がありました。ドイツでも、もちろん中国でもです。たくさんの品々の中から、どれか自分の気に入りを1つだけ選ぼうと思えば、あれこれ眺め、細部を点検し、比較しながら品定めすることができました。最近のドイツの骨董市では、花板が割れた小さな欠片が1つ、2つ並ぶ程度なので、買うか買わないか迷うことはあっても、品物を選ぶことで迷う状況ではなくなっています。今、振り返れば、自分が好きなものを1つ選び出すのが難しいほど、一度にたくさんの品々を見られたひと時は、二度とあの時には戻れない、貴重な、とても大変幸せな時間だったと思います。

とはいえ、その当時の私は、中国古道具を手掛け始めて間がありませんでした。正直なところ、良いも悪いも全く見当が付かなかったのです。選り取りみどりとはいえ、朱色の手桶を1つ選ぶにしても、どれもこれも全く同じ朱い桶に見えました。

そこで思案した挙句、目に余るような破損さえなければ、そもそも良いも悪いもないものとし、とにかく右から左に棚の1列に並んだ似たような品物を何も考えずに買うということを繰り返しました。同じような朱漆の手桶ばかり、黒漆の手桶ばかり、紅い花板ばかり、黄色い花板ばかり、茶色い食籠ばかり…そんな具合に立て続けに、同じもの、似たもの、同じように見えるものばかりを求めました。本当は大型や箪笥や椅子、テーブルにもこれをやりたかったのですが、値段がどうという前に、1個が占めるスペースがあまりに広く、置き場るのは目に見えていたので、さすがにこれらには手加減しなければなりませんでした。せめて小型の箪笥にはと心がけましたが、思う存分とはなりませんでした。大型の品物でこれを実行しなかったことは、今でも本当に悔しく思います。

もしも、あの時期この方法で同一の品物群だけを求め続けなければ、私は、これらの古ぼけた小さな桶や籠に対して、今ほどの愛着を持てなかったことでしょう。1個ずつ自分の手で持ち、動かし、埃を拭って蓋を開け、再び蓋を閉じて元の場所に戻す作業を、数年ごとに繰り返すうちに、全く同じように見えていたものが、1つずつ違って見えるようになりました。素材の違いはもちろん、制作年代が異なるもの、細工の仕方が異なるもの、素材が異なるもの、持ち主のサインらしき印があるもの、粗い作りのもの、丁寧な凝った作りのものなどとそれぞれの僅かな違いに気が付くようになりました。少しずつこれを繰り返すうちに、その感触から、およそのその品物1個の特徴や、見るべきポイントを察せるようにもなります。こんな無謀な冒険買いを思う存分楽しめたのは、ほんの束の間だったと思います。

伏見 緑(2008年11月20日)


                    (写真) オールドローズ;
欧州薔薇の品種改良も古の東洋貿易の成果。四季咲きの中国薔薇に感激した欧州人は、これを輸入し、もともと一季咲きだった欧州薔薇と共に品種改良することで、現代、楽しまれている多季咲き欧州薔薇を生み出した。



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